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【NNA記事】注目高まるテレワーク体制 設備以外に制度・企業文化も重要

2020.03.31

  • Garoon
  • kintone

3月19日NNAにより下記記事は掲載しました。
この記事は、アジア経済ビジネス情報を発信するNNA(株式会社エヌ・エヌ・エー)の許可を得て掲載しています。
URL http://www.nna.jp/

注目高まるテレワーク体制 設備以外に制度・企業文化も重要

新型コロナウイルス感染症の流行で、中国でも在宅勤務を中心とするテレワークへの注目が一気に高まっている。国民の多くが通信アプリ「微信(ウィーチャット)」やインスタントメッセンジャー「QQ」を活用するスマートフォンアプリ先進国の中国だが、ビジネス情報共有ソフトウエア大手、サイボウズ中国現地法人の増田導彦副総経理は「テレワークにはITインフラ以外にも制度の整備やこれを受け入れる企業文化の形成が重要」と指摘する。

増田氏によると、中国では最近になりテレワークで活用できるITツールが多数リリースされている。中国電子商取引(EC)最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の「釘釘(ディントーク)」や、短編動画共有アプリ「抖音」とその海外版「TikTok(ティックトック)」を展開する北京字節跳動科技(バイトダンス)の「飛書(フェイシュー)」などが有名で、防疫期間中に無料で提供していることもあり、利用者を一気に増やしている。

これらのビジネスツールはスケジュールや勤怠管理のほか、社外関係者との接続も可能なウェブ会議機能を備えているものが多く、「企業訪問や出張が制限される中で、テレワークには必要不可欠」(増田氏)と言える。

ツールを活用するに当たり、気をつけたいのがその使い分けだ。チャットツールでもあるウィーチャットは気軽に使えるものの、発信内容が時系列で積み重なっていく「フロー型」のため、情報の確認漏れや、担当社員が複数のプロジェクトに関わった場合に混乱状態に陥りやすいこと、情報が蓄積されにくいといった問題がある。

一方、例えばサイボウズが提供するビジネスツール「キントーン」など「ストック型」の場合、◇プロジェクトごとにページを立ち上げ、進捗(しんちょく)状況などを一元的に管理できる◇過去の情報を再チェックすることが容易◇社員のアポイント件数や成約件数、そのアベレージを自動集計するといった付帯機能――などの特徴があるため、フロー型の問題を補完することができるという。

サイボウズ中国の社内でも、ウィーチャット、キントーン、そしてウェブ会議ツールの「Zoom」を用途によって使い分けている。Zoomは米カリフォルニア企業によるウェブ会議システム。増田氏はZoomについて、スムーズな接続のほか、シンプルな構成でITリテラシーが低くても比較的容易に使用できることが優勢点と説明している。

ただテレワークは社員の自宅などのインターネット環境に依存するため、ツールの種類にかかわらず、時間帯や回線状況によってアクセスがしづらくなることも多々発生する。解決策としては、社員に比較的通信が安定するモバイルルーターを支給するといったことが考えられる。

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「Zoom」を使い遠隔で中国のテレワーク事情について説明する、サイボウズ中国の増田導彦副総経理

■中国ツールは"性悪説"

多くの人が集まりコロナウイルス感染が拡大することを避けるため、政府が導入を奨励したことでも注目されるようになったテレワークだが、サイボウズ中国では昨年あたりから取り入れを進めている。理由や目的、仕事内容などを判断し、個別に在宅勤務の可否を決定。最近では、出産準備のために実家に帰省したいという社員に対し、産休に入る3カ月前から在宅勤務を認めた。男性社員でも、育休前後に3カ月ほど在宅勤務させたケースがある。

ただ、テレワークを広く導入するに当たっては管理や人事評価の制度が重要になってくる。テレワークでは「あの人はサボっているのではないか」といった疑心暗鬼、「あの人だけずるい」などの不公平感が生じやすいためだ。

釘釘や飛書といった地場IT企業系ツールは、社員の管理機能に重点が置かれているのが特徴。例えば釘釘には、社員がいつ送られたメッセージを読んだかが分かる「既読」機能がついている。ウィーチャットにはないこの機能をつけることで、レスポンスの善し悪しで仕事に打ち込んでいるのか、人目がないのをいいことに仕事以外のことをしているのかが把握しやすくなる。増田氏は「中国のツールは、"性悪説"で社員はサボるという前提で作られているところがある」と指摘する。

一方でサイボウズのキントーンは、同社の社風もあり、どちらかというと"性善説"寄り。管理よりも社員のモチベーション向上を意識して作られている。個人の行動をオープンにするなど情報共有に力点を置き、「他の人がやっているので私もやらなければ」といった意識を引き出す。サイボウズ中国でも、日報から会議の議事録、プロジェクトの進捗、営業の数字などの情報がオープンになっており、誰でも閲覧可能にしている。これにより「情報格差が生じず、不公平感も起きにくい」(増田氏)。また営業成績などの情報の共有を進めることで、人事評価での不満を抑えることにもつながるという。

ただ管理型、情報共有型いずれの特徴が強いツールであっても、管理ならばどこまで正確な管理ができるか、共有型ならばいかに全社員が積極的にチャット上などで発言できるような雰囲気を作り上げるかなど、テレワークでは「マネジャーの手腕の優劣がより顕著に表れる」(増田氏)ことになる。

■「ザツダン」もポイント

さらに、テレワークの導入にはそれが馴染む「企業文化」が醸成されているかも重要になる。そもそも社内に情報共有の習慣がなく、平時でも誰が何をしているのかが分からない状態では、さらに「見通し」が悪くなるテレワークは機能しにくい。また、上司や同僚に相談がしやすい「風通し」の良さもポイントとなる。サイボウズ中国では、テレワークは社内で日ごと交わされる何気ない会話がなくなってしまうため、あえてスケジュール上に「ザツダン」という時間を設け、コミュニケーション不足を補っているという。

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